兵士、そして「歯」。 ――『日本軍兵士 ―アジア・太平洋戦争の現実』(吉田 裕 2017年)――

私は自分の「歯」の不具合を感じるたびに、思い出す著書がある。 『日本軍兵士 ―アジア・太平洋戦争の現実』(吉田 裕 2017年 中公新書)という、主に日中戦争からその後に拡がったアジア・太平洋戦争期の日本軍兵士が置かれた現状を記したものである(以下で挙げ…

いち「清掃員」が語る6つの瞬く星たち  ― アユニ・D編 ―  &まとめ

「アユニ・D」の加入当初からの変遷を見ていると、感慨深さと共に、若い「清掃員」などにとっては勇気や刺激が与えられるだろう。 彼女の表現者としての急進的なさまは目を見張るものがあるからだ。 それはもちろん、彼女自身の才能によるところもあるのだろうが…

いち「清掃員」が語る6つの瞬く星たち  ― リンリン編 ―

誰しも可能ならば、雄弁に自身の思いを他者に伝えたいと思うものだろうから、「無口担当」なんていうのは実のところ「リンリン」自身は不本意なのかもしれないけれど、個人的には、全く皮肉ではなく羨ましい「担当」だ。 文字通り喋らなくていいし、「担当」といって…

いち「清掃員」が語る6つの瞬く星たち  ― ハシヤスメ・アツコ編 ―

BiSHの中では、見た目としては最も飾り気の無いメンバーと言えるだろうが、そうであるが故に逆に異質にも思えるのが「ハシヤスメ・アツコ」だ。 もちろん人それぞれに承認欲求であるとか、お金が欲しいとか、少し口に出すのは憚られるような、「ゲスい」というと…

いち「清掃員」が語る6つの瞬く星たち  ― アイナ・ジ・エンド編 ―

BiSHの楽曲を聴いたとき、まず「アイナ・ジ・エンド」のエモーショナルに歪む、尖鋭的な歌唱に耳目が惹かれるのは分かりやすいところだ。 異性ながら憧れの歌声だ。あんな声で歌いたい。 あんな風にマイクの柄の真ん中より少し下の方を持ってこなれた感じでカ…

いち「清掃員」が語る6つの瞬く星たち  ― モモコグミカンパニー編 ―

BiSHのメンバーの中では、最も「TVタレント」ぽくないというか、例えばバラエティ番組などに出演していても、そこでの「原理」に流されないというか、言ってみれば「文化人」のような風体を「モモコグミカンパニー」には感じる。 このことが「文化人」的というわけでは…

いち「清掃員」が語る6つの瞬く星たち  ― セントチヒロ・チッチ編 ―

BiSHのメンバーは、例えるなら「仮面ライダー大集合」みたいな感じだろうか。そんな風に私には見える。仮面ライダーに詳しいわけではないが、知り得る限りで具体的に例えるとこんな感じだろうか。 セントチヒロ・チッチ → 仮面ライダーV3 モモコグミカンパニー …

いち「清掃員」が語る渡辺淳之介という人物

やはり48や坂道グループにおける秋元康の如く、BiSHにとっても同様の人物が存在する。 所属事務所『WACK』の社長、渡辺淳之介だ。 いろいろ総合した結果、個人的には好きではない人物である。 メディアにもたびたび出演してきている彼だが、まず『WACK合同オ…

懐かしくも新しい、BiSHという表現

BiSHが好きになり、YouTubeの関連動画を掘り出した。個人的事情だが何しろ時間はある。 MVや過去の出演番組などなど、多くのBiSH関係者、支持者や「清掃員」のおかげで大量の関連情報に容易にアクセスできる。良くも悪くも便利な時代だ。 再びテレビ朝日系『ア…

これがBiSH…ダサ…くないっ!

「楽器を持たないパンクバンド」。このキャッチコピーを初めて聞いたとき、率直に「ダサい」と思った。 「BiSH」。名前を耳にしたことはあった。 メンバーではアイナ・ジ・エンドという名前だけは認識していた。様々なアーティストとコラボレーションしていること…

空しい「バラエティ番組」

テレビ、特にバラエティ番組がつまらない。もちろん全ての番組を観ているわけではない。 そもそも近年は一部を除きテレビ番組自体ほとんど観なくなった。 その理由を考え思い当たったのはまず、「定式化」してしまい、つまらないということだ。もっと言えば、…

カラスに始まる、とあるラジオ局アナウンサーへの不快感

街にいるとカラスをよく見かける。年中見かけるんだったっけ?よく覚えていないが、そんなことは別にどうでもいい。 私はカラスを見かけると、いつもあることを思い出す。 『親父・熱愛(パッション)』という文化放送のラジオ番組がある。この番組は、伊東四朗…

生きるとはアンビバレント(PART13)  ~生きてりゃ大体は「ダサい」~

それは、NHK朝ドラ『あまちゃん』でのとあるシーンである。 共にアイドルになることを夢見ていた、のん(当時 能年玲奈)演じる主人公の天野アキと、橋本愛演じるその親友である足立ユイ。 しかし、とある事情でユイが挫折し、その夢を諦め投げやりになり、ユ…

生きるとはアンビバレント(PART12)  ~「生身」を無視する期待の悪弊~

たとえ欅坂46が他の48や坂道と一線を画していて、それが現在の私の琴線に触れるものであっても、やはり秋元康に対する不信感は拭えない。これは矛盾しない。 何かへの信仰心がその何かの創設者や支配するものまで全てを信仰するとなると、それは一神教の神に…

生きるとはアンビバレント(PART11)  ~欅坂46とスマイルハラスメント~

欅坂46についてもう少し書くと、彼女らの楽曲のMVでは、メンバー1人が顔面アップのフィックスシーン、いわゆる「リップシンク」と呼ばれるものだが、そこで日本の「アイドル」でありがちな、「私かわいいでしょ?ウフ♡」的な演出が、ごく一部の楽曲を除き基本的に…

生きるとはアンビバレント(PART10)  ~続・欅坂46MVプレイバック、かく語りき~

続いて、『二人セゾン』は一見、かなり既存の48や坂道のイメージに近いだろう。 MVも「スクールガール信仰」感が強く、その点は個人的には気持ち悪いのだが、03:27あたりからの平手のソロダンスの振付けと共に、このMVでの特に私の印象的な点は、03:53あたりか…

生きるとはアンビバレント(PART9)  ~欅坂46MVプレイバック、かく語りき~

まず、『アンビバレント』のMVはやっぱり見どころ満載だ。一部抜粋。 01:38~01:41のあたり、「及び腰ぃー」から「話を聞けば巻き込まれる」で、平手以外のメンバー全員がしゃがんで手を斜め上に伸ばしたまま静止、平手ソロダンス。シビれる。 04:26~、「この夏」…

生きるとはアンビバレント(PART8)  ~逡巡がもたらす欅坂46の引力~

私が欅坂46に改めて注目しだしたのは、前職を退職する2019年9月ごろだった。 退職した安堵感はあったが、その後の漠然とした予定は立ててはいたものの、個人的にも社会的にも、将来に対する不安感などを考えれば、件の「心が弱っているとき」だったかもしれな…

生きるとはアンビバレント(PART7)  ~さよなら48グループ、再びの欅坂46~

それらが表現する作品への興味が失われたことに加え、イデオロギーにおいても賛同出来ない方向に向かえば、それらに対する私自身の気持ちが離れるのは無理もなかった。 そして、改めてそれはAKB48に対しても同様である。というか48グループ全体に対してだ。 …

生きるとはアンビバレント(PART6)  ~NMB48の功罪~

『ワロタピーポー』は須藤凜々花卒業後最初にリリースされたが、これは見えないところから石を投げるが如くにSNS等で匿名での誹謗中傷を行い笑う者を「ワロタピーポー」と称して歌詞が展開される。 「どこの誰か名前隠して騒げ!」 「人の群れに紛れ石を投げろ!」…

生きるとはアンビバレント(PART5)  ~NMB48に見ていたもの~

NMB48。おそらく日本の一般論として若く見目麗しい、関西弁話者の乙女たちが、「中央」に対するアンチテーゼという立場をラディカルに表現する、そんなイメージというか期待を込めて当初の私は彼女らを観ていたのかもしれない。私が関西出身であるということも…

生きるとはアンビバレント(PART4)  ~欅坂46で揺れる秋元康への感情…からのNMB48~

制作者への不信感情とその人物が生み出す作品に対する評価は別物と考えざるを得ないときがある。 私が秋元康に対してそれを感じたのは2018年にリリースされた欅坂46の『アンビバレント』という楽曲についてだった。 まず心理学用語であるこの『アンビバレン…

生きるとはアンビバレント(PART3)  ~続・今さら始める48グループ考~

秋元康のことが好きではない、というか信用出来ない。 「管理している大人たちの合理性」に振り回される若者たちの感情の起伏を見せることを「商品化」する構造を作り上げた者たちの中心にして、「鶴の一声」を持っているのが彼だろう。 しかし、その構造に懐疑的…

生きるとはアンビバレント(PART2)  ~今さら始める48グループ考~

48グループの金権性への訝しさの他、まずこの「握手会」については、私はメンバー本人たちに面と向かって会いたいとは思わないので、参加する気にはなれない。 実際にそれに参加したことが無いので、メディアなどで目にする限りでの想像によるものであるが、こ…

生きるとはアンビバレント(PART1)  ~はじまりのAKB48~

「心が弱っている時にアイドルにハマりやすい」 これはプロインタビュアー吉田豪の言であるが、私は「48グループ」に強い興味を持っていた時期がある。 きっかけは2009年にリリースされたAKB48の『RIVER』という楽曲だった。歌詞の言葉の選び方、曲調や演出が、…

オー、ジャパニーズヴィディオゲーム

いわゆるTVゲーム。英語圏ではvideo game。私自身も若い頃から幾度となくそれで遊んできた。 近年はRPGやオープンワールドのものなど、1人用のものばかりやっている。とはいえ、それほどゲームに詳しいわけではない。 ただそんな中、海外で作られたゲームに…

中年の危機とスターの鬱(PART 4)

特に目を引いたのは『サブカル・スーパースター鬱伝』(吉田豪)での精神科医の香山リカへのインタビューで出てきた、サブカル好きの人の「自意識過剰」傾向の話だ。 都市生活における多様な文化の中でニッチな趣味や感覚を持っている人の、社会的、商業的な成功…

中年の危機とスターの鬱(PART 3)

この吉田豪の著作『サブカル・スーパースター鬱伝』(以下、“本書”と表記)、購入した時のことは覚えていないが、単なる興味本位で当初はパラパラと読んで、「才能がある人は大変だな」程度の感想しかなかった記憶がある。 今回読み返してみても、やはり「鬱」に関…

中年の危機とスターの鬱(PART 2)

「サブカルを通っている人間は40歳ぐらいで欝々とし出す傾向がある」というプロインタビュアー吉田豪の言。 サブカル。サブカルチャー。おそらくこれまで数多論じられてきたものであろう。 メインに対してサブというカテゴライズ。定義は曖昧であろうし、公に…

中年の危機とスターの鬱(PART 1)

「ミドルエイジクライシス」 まことに遅ればせながら、最近この言葉を知った。 ググって筆頭に出てきた東洋経済オンラインの記事の冒頭の説明によると、 「人生の中盤に差し掛かり、仕事もプライベートもある程度の経験を積んで、今一度、自分自身を振り返る時…