生きるとはアンビバレント(PART1)  ~はじまりのAKB48~

「心が弱っている時にアイドルにハマりやすい」

これはプロインタビュアー吉田豪の言であるが、私は「48グループ」に強い興味を持っていた時期がある。

 

きっかけは2009年にリリースされたAKB48の『RIVER』という楽曲だった。歌詞の言葉の選び方、曲調や演出が、それまでのいわゆるアイドル楽曲に対する概念から考えれば、前衛的な作品だったと思うので、私も惹かれたのだろうと思う。

 

その歌詞のテーマ自体は「夢を諦めるな」的な、今となっては目新しいものではないが、私にとってのアイドルの概念からしてそれは特異なものだった。恋愛にまつわるものが一般的だったアイドル楽曲の歌詞に、人生のあり方といったようなものを持ち込んだのは私にとってはAKB48が初めてだったのだ。

 

彼女らの活動の中で一番好きだったのはテレビ東京系『マジすか学園』のシリーズ第一作目である。

 

在籍しているほとんどが不良学生である「私立マジすか女学園」が舞台のバイオレンスな学園ドラマで、出演者のほとんどが48グループメンバーで、主演は当時AKB48のメンバーだった前田敦子だ。この内容について、字数を割いて説明はしないが、設定や演出が当時の私にとっては印象的なものが多かったのだ。

 

この「マジ女」を牛耳る不良たちが集まるのは、もう機能しなくなった吹奏楽部で、その名を通称「ラッパッパ」という。この設定と名付け方にそこはかとないセンスを当時の私は感じた。

 

そしてその「ラッパッパ」の部長、即ち「マジ女」の“テッペン”が大島優子演じる「大島優子(本名と同名)」であるが、喧嘩シーン中の表情や仕草に、彼女本来の“やんちゃさ”が現れていた気がするのだ。

 

また、松井玲奈は、作品内でもひときわ狂気的でバイオレンスな「ゲキカラ」役の好演により、グループ内での彼女の地位が押し上げられたのだと私は思っている。

 

あと細かいところで言えば、渡辺麻友演じる「ネズミ」は9ホールのティンバーランドを愛用していた。彼女と、少なくとも当時はストリートファッションの象徴の一つだったこの靴の取り合わせが個人的に秀逸だと思っていた。

 

放送当時は毎週欠かさず観ていた。シリーズの他作品でもこれらの設定は引き継がれていたりするが、私は第一作目が一番好きだ。だから、この第一作目のDVD-BOXはどうも処分する気になれない。

 

と、いろいろ思い出してつらつらと書いてしまったが、おそらくこれまで語りつくされているであろう48グループのことを今さら論じ始めるつもりは基本的には無い。

 

自分の過去を振り返ってみて、それを好きになった当時、私の心が弱っていたのかどうかを考えてみたかったのだが、どうもそういった時期ではなかったと思う。

ひとまず、選抜総選挙など、少なくとも私が過去に見たことの無い活動の連続だったのでそのことに興味を惹かれたのであろう。

しかし、私は選抜総選挙への投票はおろか、握手会への参加もしたことが無い。

 

興味を惹かれ、ファンになったとはいえ、握手会や選抜総選挙などのシステム上の結果(?)、大変な金権性を持つこととなったことに対する訝しい気持ちは私にもあり、それもそれらに参加しなかった理由ではあるが、それ以外にもあるのだ。

 

PART2へ続く。