占い師やってみた(1/3)

私は前職を退職してから、ほんの少しの間「占い師」をしていたことがある。

街角に勝手に小さなテーブルを設置して、通る人におもむろに「ちょっとあなた」と声を掛けて…などということではなく、正式に占い事業を行っている会社と「鑑定師(占い師)」として契約していたことがあったということだ。

 

その端緒は前職在職中のある時、占いは宗教などと同様に文化的に廃れるものではないであろうし、実際の活動としては占い師個人の自由度も高いであろうという考え、その職業に興味を持った、いや持ってしまったことである。

 

やがて某占い師養成スクールに通いだした。そこではひとまずタロット占いだけを学んでいた。

タロット占いを選んだ理由は、まさにその時々に起きている個別の状況や状態などに対する過去現在未来の傾向を占い、人生の方針を考えていくというのが個人的なタロット占いに対するイメージであり、そのことが建設的である気がしたからだ。

 

例えば対象者の「生来の性質」をもとに占う西洋占星術などは、「個人の性質を決めつける」ようなイメージがあり、どうも私には合わない気がする。ただ、「個人の性質を決めつける」ものという風に私も「決めつけて」しまっていることになるので、矛盾しているのだが。

 

実際は複数の占いを組み合わせる占い師が多いようだが、働きながらだったし、複数同時に勉強するのも大変そうなのでとりあえずタロット占いだけを学ぶことにしたのだった。

 

勉強を始めて約1年経ったとき、まず某占いアプリの鑑定師として活動を始めてみることことにした。そのアプリの基本的な事業形態は電話鑑定とチャット鑑定である。しかし実績も無い私への依頼などまずほとんど来ない。このアプリには先の2つの鑑定の他に一問一答形式の相談コーナーがあり、とりあえずそちらを主にやり始めた。

 

その相談コーナーは、何とか知恵袋のように相談者が複数の鑑定師の回答の中からポイント(お金)を消費して「ベストアンサー」を1つ選ぶことが出来る、ただ、回答の中にめぼしいものが無ければ、相談者はそれを選ぶ必要は無い。相談者の自由である。

そのコーナーでは私の回答が「ベストアンサー」に選んでもらえることが何度もあった。実際のアプリ内のそういった統計データが不明なので、勝手な判断だが、その確率は高い方だったのではないかと思っている。1つの相談に対する10人以上からの回答の中から私が「ベストアンサー」に選ばれることもしばしばだった。

 

それで気を良くし始めていた私は、実際に人前に出て行う「対面鑑定」の活動を始めてみようと思い、ほどなくして占い会社と契約、「鑑定師」としてデビューすることとなったのだ。

 

契約したといっても、おそらくこの世の全ての占いの「鑑定師」と同様である報酬完全出来高制。その占い会社の話では、基本的にそれのみで生計を成り立たせられている人はほんの一握りであり、また男性鑑定師なら尚更その傾向が強く、特に活動当初に収入はほとんど望めないとのこと。

まぁそのあたりのことは想定していたし、最初から自分に客が付くことなどあり得ないことは分かっていた。

 

しかし、私はこの時点でそんなことよりも根本的かつ最も重要なことに気付いていなかったのだった。

 

次回に続く。