雇用保険と私 ~ケチ上等~

2019年9月末で前職を退職し、ほどなくして「雇用保険受給」の手続きにハローワークへと赴いた。

私はこれより以前にも退職経験があり、その際にもこの手続きを行ったことがあったのだが、それは10数年前の話なので、その時の手続きについて細かくは覚えていないが、ハローワークの雰囲気だけはある程度覚えている。

住んでいる場所も変わり、その時とは別のハローワークだが、10数年前と変わらず、まぁ明るい雰囲気は無い。当然と言えば当然だし、別に明るくなくてもよいし、その必要も無いであろう。

 

そしてそこには就職相談やその他手続きが目的であろう多くの方々が常にいる。

普段、街にはたくさんの人が通りなどを闊歩しているが、皆それぞれに様々な事情を抱えているということが、こういったところに来ると改めて思い知らされる。

 

で、今回書きたいのはこの「雇用保険受給」についてである。

 

受給のためには事前に雇用保険説明会に出席しなければならない。このとき出席した雇用保険説明会には数十人の方が出席していた。おそらく毎回このぐらいの人数は出席しているのだろう。

今回の説明を受けてまず分かったことは、「辞めたけど、しばらくはゆっくりしようかな」と考える人間に対しては給付する気はない制度であるということだ。そういった人が給付を望むなら、「求職活動実績」という「再就職を望むパフォーマンス」、「就職活動してますアピール」をハローワークに対して行わなければならない。

 

私は以前にも受給経験があるので、この「求職活動実績」については知っており、以前はハローワークに設置されている端末で求人情報を閲覧する“だけ”でそれと認定された。その記憶があったので、今回もそんな感じであろうと高をくくっていた。しかし今回の説明会では、以前とは違う自治体だったためなのか、10数年前だったためなのか、それだけでは「実績とは認定されない」とハッキリ言っていた。

 

それは実際に「どこぞの企業へ就職面接に行き、不採用」などの「求職活動実績」を作り、月に1度、「失業状態であること」が認定されなければ給付資格が得られないというものだ。「求職活動実績」に当たるものは他にもいくつかあるが、この説明会で特に強調された実績は「どこぞの企業へ就職面接に行き、不採用」、というものであった。…この時点で雲行きはかなり怪しい。

 

で、受給するにあたってもうひとつ重要なことが「仕事を辞めた理由=離職理由」である。

この制度では「離職理由」が細かく15種類に設定されており、それにより「特定受給資格者」「特定理由離職者」「一般受給資格者」なのかどうか、そして「所定給付日数」、さらに「給付制限の有無」が各人に定められる。

 

「所定給付日数」については今回割愛するが、この「離職理由」、今回私の場合は、以前もそうだが「正当な理由のない自己都合退職」に当たる。

ここでは私の場合に限定して書いているが、この「正当な理由のない自己都合退職」の場合、まず3ヶ月の「給付制限」という期間が設定され、その期間は給付されない。だが、その期間中も「求職活動実績」を作り、月に1度の「失業認定」を受けていないと(3ヶ月なので、つまり計3度の認定)、「給付制限期間」経過後に雇用保険は給付されないのだ。

この「給付制限」、場合によっては1ヶ月になるらしいが、その条件は「受給資格決定後、待期満了前に被保険者期間2ヶ月以上」らしい。ちなみに「待期」とは受給資格決定日から失業の状態にあった日から基本手当の支給を受けられない7日間のこと。…結局よく分からない。

 

他方、例えば会社の倒産や退職を勧められた場合、あるいは雇止めなどによる場合などはいわゆる「会社都合」に当たるので、「給付制限無し」になるということだ。またハラスメントや、心身の不調などが原因の「やむを得ない自己都合」で辞めた場合も「給付制限無し」と認定されたりすることはあるようなのだ。

 

しかし、例えばハラスメントの場合は、会社側がその事実を認める必要が出てくるだろう。

その場合に会社側がそれを認めず、「あいつが勝手に辞めた」と認定してしまったら、「単なる自己都合」になってしまうのではないか。その状況で、会社側と係争状態なんかになったりしてまで認めさせようとする人がどれほどいるだろう。あまりに酷いハラスメントならその可能性もあるだろうが、そのための負担を考えたら、多くの人は「単なる自己都合」を選ぶのではないか。

あるいは会社の体質さえ変われば退職はしなかった、それを変えようと努力したけれどそれは叶わず、やむなく退職した、などの場合も自分で勝手に辞めたということで「単なる自己都合」だろう。

 

もちろん人それぞれ様々な事情はあるだろうが、私が思うに、社会情勢が平時だと、退職理由は「単なる自己都合」になってしまうことが一番多いのではないだろうか。知らんけど。そして上記のような労働者側に屈辱的なパターンが往々にしてあるように思う。私も言ってしまえばそれに当たるかもしれない。

だいたい、「離職理由」にそんなにこだわる必要があるのか。

労働者に不正や背任行為があり、会社の信用に傷をつけたりなど、不利益を被らせたりしたのなら、この受給に対するペナルティがあるのも分かる。しかし、「単なる自己都合」にはまさにペナルティのような「給付制限」が設定されている。

 

この「給付制限」は意味不明である。「正当でない自己都合」だから、「自己責任」だ、そんな奴には簡単には金はやらん、とでも言いたいのだろうか。この「3ヶ月」という期間設定の根拠も不明である。なぜ3ヶ月なのか。

また、多くは「自己都合」で辞めてから「3ヶ月の給付制限」を知るのではないのだろうか(私が以前受給した時にもこれがあったかどうかは覚えていない、まぁ調べる気にもならない)。

「蓄えはあまりないけど、雇用保険があるからしばらくは大丈夫だろう」と思って退職した人はどうなるのか。

蓄えが無いのが悪い、退職前によく調べないのが悪い、これも「自己責任」だ、とでも言いたいのか。

また、その3ヶ月の間にアルバイトを継続して行い、一定の金銭を得てしまえば、それは既に「就職した」と見なされ、給付を受けられなかったりする可能性もあるそうだ。

 

だから結局、給付制限も無く受給可能なのは「会社都合で辞めることになり、再就職のために活動しているが、なかなか就職が叶わない人」なのである。

 

この「失業認定」については、実際はもっと細かく設定され、私の印象より給付されやすいのかもしれないが、とはいえ給付金額自体は一人暮らしや扶養家族がいる人にとってはそれだけで生活するにはかなり難しい金額である。とはいえ、個人的にはその金額についての現行設定にひとまず言及する気はない。

 

しかし、どうにも不親切なのである。煩雑にして、出来るだけ受給を断念させる方向に持って行こうとしているような印象すらある。

 

確かに私は「自己都合」で退職した。勝手に辞めておいてずうずうしいと思われるかもしない。

しかし、10数年前の受給の際にはそんな印象は受けず、もっと受給しやすかったはずだ。

 

給与の額に対して、それほど高額ではないにせよ、在職中に「義務」として雇用保険料を支払わされていたように、徴収するときはあっさり行われるにも拘らず、いざとなったときは様々な条件を付けて保障を渋る、そんな制度設計のように感じる。

 

前職を退職してから本当に思うのが、仮に何もせずにボーっとしていても、税金や保険料の支払いなどにより、どんどん自分の蓄えが吸い上げられ目減りしていき、ただそこに住んでいるだけで、命を吸い取られている気分になるということである。そのくせ、その義務を果たし続けてきた者が本当に困った時には金を出し渋る。このCOVID-19禍でもそれが顕著である。

 

それはそうと、日本国憲法に規定されている「職業選択の自由」は「ひとまず働かない」という自由もあるはずだし、「勤労の義務」も何をもって「勤労」とするのかは他者に規定されるものでもない。「働かざるもの食うべからず」?そもそも金銭が絡まないと「働く」とは見なさないのか?

行政の態度として、金銭を稼ぐ意思を見せないと「金」はやらん、とはどういうことだ。その「金」はもとはと言えば我々が納めた「金」だ。

 

ともかく当該説明会では、「あなたがた、どん底状態でさぞお困りでしょう。我々が救って差し上げましょう。しかし、まず我々の言う通りにし、汗を流し金銭を稼ぎ、我々が管理する社会に貢献したいという態度を“明確に”示さない限りは、その手を差し伸べませんのでそのつもりで。」と言われた気分だった。

 

総じて偉そうな上にケチなのだ。

 

考え過ぎだろうか。

 

行政の思惑通り(?)、バカバカしくなったのでそれ以来ひとまずハローワークに行くのは止めた。

 

近年は公務員にも非正規雇用者が多く、ハローワークの職員も例外ではないらしい。

自分が非正規でありながら、他人の就職の世話をすることについて何か思うところがある方もいるのだろうなと想像する。

 

世知辛い現代である。

 

※今回書いた内容はあくまで私個人の解釈であり、理解が足りない点も多々あるだろう。その点は悪しからず。