欅坂46『Live Online,but with YOU!』に見たもの(PART 3)

10曲目『ガラスを割れ!』披露後、菅井を先頭に並ぶメンバーたち。

 

菅井が語り始める。

今回のライブでおそらく最も大事な部分なので、抜粋ではなく以下に全文書き起こし。句読点などの位置は菅井の話す調子に準じている。

 

〈はい改めまして、いつも欅坂46を応援して頂きありがとうございます。

 

そして配信ライブをここまでみて下さりありがとうございます。(一同「ありがとうございます」。一礼)

 

久しぶりのライブですし、いつも支えて下さる皆様に、久しぶりに私たちの元気な姿と、そして楽曲のメッセージ、パワーをお届けしたいという一心で、パフォーマンスさせていただきました。

 

皆さんには届いていますでしょうか?

 

……………そしてここで、私たちから皆様にお伝えしたいことがあります。

 

私たち欅坂46は、この5年間の歴史に、幕を閉じます。

 

そして欅坂46と、前向きなお別れをします。

 

…10月に予定している欅坂46のラストライブにて、欅坂46としての、活動に、区切りを付けさせていただきます。

 

そして、新しいグループ名となり、生まれ変わります。

 

もちろん、この決断をすぐに受け入れられるメンバーばかりではありませんでした。

 

私たち自身も、欅坂46に対する思い入れがすごく強いですし、ここまで半端な気持ちで、このグループとして続けさせていただいてきたわけではありません。

 

私自身も、大好きな欅坂46をずっと、ずっと守ることが出来たらなと思って、活動してきました。

 

でも、…でも、…このグループとしてもっともっと強くなるための決断だと、今日までスタッフの皆さん、そしてメンバーのみんなと話し合った結果、今は前を向いています。

 

欅坂46だからこそ、叶えられた夢がたくさんありました。

 

今ここにいないメンバー含めて、みんなで叶えられたこと、そして、応援して下さる皆さまがいて下さったからこそ、叶えられたことがたくさんあります。

 

心強いメンバーやスタッフの皆さん、そして素敵な楽曲、そして、本当に素敵なクリエイターチームの皆様、そして数えきれないぐらいの応援をして下さる皆様と出会えたことは本当に誇りです。

 

本当に今まで、欅坂46に出会って下さって、欅坂46を好きになって下さって、欅坂46を支えて下さって、(感極まり、声が上擦る)本当にありがとうございました。(一礼。続くように他のメンバーも「ありがとうございました」の言葉とともに一礼)

 

たくさん楽しい思い出が、あった一方で、正直悔しい思いもたくさんしてきました。

 

なかなか、この2年は、特に、出口の見えないトンネルを彷徨って行っていったような状態だったと思います。

 

予測できないことがたくさん起きて、思うように活動出来ない日もありました。

 

応援して下さってる皆様の期待に応えられていないんじゃないかなって思う日もありました。

 

そしてメンバーの、卒業、脱退も続きました。

 

グループの名前がひとり歩きして、耳を塞ぎたくなるようなことに悩まされた日もありました。

 

でも、欅坂46を、好きだと思えば思うほど、苦しくなり、もっとこうしなければならないと考えれば考えるほど、執着が生まれたような気がします。

 

いま、グループとして強くなるために、新しく入ってきてくれた2期生、新2期生、そして1期生の28名で、ここから新たなスタートを切り、もう一度皆様と、たくさんの夢を叶えていけるように頑張りたいと思っています。

 

そして、ここから強くなるために、いままで、大切にしてきたことを、いま一度手放すことで、空いたスペースには、本当に、大事なものでまた、満たされるんじゃないかなと思っています。

 

ここからのリスタートになるので、相当な茨の道が待っていると思います。

 

でも、まだ、色の無い真っ白なグループを、皆さんと一緒に染めていけたらいいなと思っています。

欅坂46で培った経験が、きっと私たちを鍛えてくれています。

 

ですので、この経験を信じて、また、新たに、強く強い、グループになることを約束いたします。

 

ですので、これからも、私たちに期待していてください。

 

これからも、私たちの応援、どうぞよろしくお願いいたします。(一同「よろしくおねがいします」。一礼)〉

 

そして守屋〈最後にお届けする曲が、欅坂46ラストシングルになります。聴いて下さい。〉

 

暗転

 

 

巨大モニターにシングル、アルバムの宣材写真(?)がリリース順にゆっくりとしたペースのスライドショーとして流れる。

そのモニターの下に集まるメンバーたち。

 

11.誰がその鐘を鳴らすのか

初披露。

衣装変更。名称は分からないが、ピーコートのようなダブルのフロントでノースリーブ。

 

欅坂46」として存続していくための最適解としての「鐘」を探していたけれど、その方法はついぞ見つからなかった。言語ならば、その言語が分からない者もいる。だから「鐘の音」。

でもそんなものは最初から無かったんじゃないのか。いやでもあるかもしれない。ううんあるはずだ。だからちょっと黙っててくれ。余計なことはするな。…やっぱり見つからない。そもそも本当にあったのか?的な。「逡巡」が良い感じだ。

楽曲の批評をするつもりはないけれど、そんな感じに私は受け取った。

 

振付けは緩急があり、「急」がかなり激しい。

最後にメンバー全員が目を閉じているのも印象深い。

 

パフォーマンス中に菅井のみ、その動きの激しさのあまりか衣装の上半身が前開き状態になった。しかし終盤、大きくしゃがんだ後に閉じられていた。ははん、マジックテープだな。知らんけど。いや、それは別にいい。日本のアイドルはライブ中の衣装替えを短時間で行わなければならないケースがほとんどなのだ。

 

それにしても、エモいって言葉は使いたくないけれど、この時のメンバーの、特に菅井のパフォーマンスをエモーショナルと言わずして何というのか。

欅坂46キャプテン 菅井友香」。パフォーマンス中の菅井は凄い。時に目を見張るような「爆発力」を見せる。おそらく、これから長年に渡りエンターテインメント界で活躍する人なのだろう(素人目線ですよ)。だけれども、なんだか頼りない。彼女に「マッチョなキャプテン」を期待してもおそらくそれには応えてくれない。そんなことは分かっている。

 

だからこそ助ける。助けたくなる。おだてたくなる。「よっ、キャプテン!」と持ち上げたくなる。

でもそれは彼女に責任を押し付けるということではない。彼女の「機嫌の良さ」がグループのパフォーマンスを向上させるということだ。

 

漫画『ワンピース』の主人公「モンキー・D・ルフィ」は一味のキャプテンだが、ある時、「おれは助けてもらわねェと生きていけねェ自信がある!!!」と堂々と言い放った。

 

「自分はひとりでだって生きていける、どんな問題も大したことない、だから俺について来れば大丈夫だ」、そんな根拠の無い「マッチョイズム」は、実際に予測できないことが目まぐるしく起きる現代でどれほど機能するのだろうか。

ならば、ルフィのようにちゃんと助けを求めることができ、それに応えることができる周囲の環境を整備することが、「現代のキャプテンシー」なのではないだろうか。

 

菅井が周りを頼れば誰しも助けてくれるだろうし、その姿を見せていれば、他のメンバーも何かの折に周囲に助けを求めやすいだろう。

そもそもキャプテンなどの「ポジション」に限らず、ちゃんと助けを求めることが出来る能力が人間の生存には不可欠なのだと思う。

 

だから、グループ改名となっても「キャプテン」というポジションが変わらず存在し、続投するのであれば、ひとまず菅井は「ルフィ」を目指してはどうだろうか、なんて。

 

そんな彼女は今回、グループを代表して言葉を述べた。話し方やその表情、非常に気持ちが伝わってきた。立派だった。

しかし、キャプテンとはいえ、楽曲制作や振付け、またグループ運営上の発言権や決定権がどれほどあるのかも分からないメンバーたちを代表して、彼女だけにメディア向けにグループの大事な決定事項を語らせるというのも、酷なように思える。

 

「大人」や「世間」との「闘争」の中で、彼女らはこの先どんな道を歩んでいくのだろうか。

 

 

そういえばまだライブは終わっていなかった。

11曲目終了。

 

11曲目のベーストラックをBGMにメンバーを映すカメラが正面からまっすぐに引いていく。

メンバーたちの姿が次第に小さくなり、スモークで見えなくなる。

カメラがライブ開始時の大きな上下開閉式の扉の外まで下がりきったところで扉が閉じていく。

閉じた扉には大きな欅坂46のロゴが表示されており、そのままライブは終了。

 

素晴らしいライブだった。

このコロナ禍での苦肉の策とはいえ、こういった「生配信ライブ」というのは、そういった事情関係無く、ひとつの表現のかたちとして、評価されるべきものだろう。

 

欅坂46」という名の存続の「鐘」は鳴らせなかったが、次へ向かうための「鐘」は既に鳴っていると期待する。